TEKI雑記

古民家暮らしのDIYな日々を綴ります

「自力建築を検証する」住まいを自力建築したいと思う方へ

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素人が住居をセルフビルド・自力建築する場合、知識・技術や楽しさに偏りがちだと思うのですが、何故、プロに頼まず自分でやるのか?というそもそものバックグラウンドも掘り下げていくとおもしろいと思います。

私が住居のつもりで小屋を建築したことで、「自力建築を検証する」という冊子を昨年つくりました。
続きは冊子の内容です。特にDIYがはじめてで、これから住居をセルフビルド・自力建築したいと考えている方に!


 どうして自力でやるか

 そもそも何故、プロに頼まず自力建築するのか?「モバイルハウス」を提唱している坂口恭平氏のように、社会に対して問題提起があってやる人もいれば、単に趣味のDIYで、ついやり過ぎちゃって、建てる人もいる。私の知人は、現代建築が生理的に合わず、縄文ハウス(竪穴式住居)を建築した。私の場合はプロに頼むお金もないし、今後の自給農暮らしには、大工スキルが必須だと感じたからである。

 どのようなものを建築するか

 建築といってもいろいろあるが、ここでは人が住む「住宅」の建築について考えたい。しかし、そこはさすが自力建築!本人が住めると思えば、どんな建築物でも「住宅」になってしまうのだ。実際の建築物の結果は、その人の技量・予算・センスの他に、その人が「住宅」をどのような観点で見るかというところも大きい。

例えば、坂口恭平氏の「モバイルハウス」は、一軒10万円以内の超低コスト住宅だ。(住宅というより、車輌に近いが)彼は言う。「皆が借金を返済すれば、銀行は倒産する。住宅ローンを組んで、おかげで会社でバリバリ働かなきゃいけなくなって、万歳!経済発展!って…それっておかしくない?」私個人的には彼の問題観点は好きだが、彼の「モバイルハウス」には住む気になれない。狭い、寒い、暑い、モバイルのくせに運ぶのが大変と、まぁ私にとっては嫌なことばかりだ。あと大変失礼だが、みすぼらしい。10万円で「モバイルハウス」をつくるなら、寒冷地対応のメーカーテントを買ったほうが、個人的にはかっこいいし、何といってもコンパクトに収納して運べる。モバイル性という点では、テントこそ究極の「モバイルハウス」だと思うのだ。私の独断の仕分けでは、彼の「モバイルハウス」は超エコノミー住宅というだけで、「住宅」としての合理性もアート感もいまいちだ。

さて「モバイルハウス」は極端な「住宅」として、他にどんな「住宅」が考えられるだろうか。エコノミー&合理性だけを考えれば、マーク・ボイル氏(cf.「僕はお金を使わずに生きることにした」)のように「トレーラーハウス」か「プレハブ住宅」でよい。自分で断熱材等を内装すれば、かなり快適になるはずだ。しかし、これまた私個人的に、「トレーラーハウス」「プレハブ住宅」は無粋でアート感に欠ける。

ならばアウトドア・DIY雑誌に挙げられている「ツリーハウス」「アースバッグハウス」「ストーンハウス」「ストローベイルハウス」などはどうだろうか。これらの建築物なら、自然素材を使うことで、シックハウスのリスクも低く、アート感もあり、工夫次第で低コストでできる。これはなかなかグッドではないかと言いたいところだが、これまたまた私個人的には、秘密基地的なところが納得いかない。要するに、二、三日のお泊りならともかく、永住性には欠けると思うからだ。

私の中での「住宅」の基本的条件は、次のようなものである。



耐震であること。

化学防除以外のシロアリやネズミ等の対策があること。

シックハウスのリスクがないこと。

換気・湿度調整にランニングコストがかからないこと。

断熱がしっかりとされてあること。(冷暖房光熱費が低い)

耐用年数が長いこと。

廃棄物を出さないこと。



要するに、建築工法とマテリアルの問題である。例えば現代住宅でよく使われる「2×4工法」は、耐震性には問題ないが、工法特性上どうしても合板や新建材を多用してしまう。その結果、シックハウスのリスクが高まってしまうのが嫌なのだ。「木」というマテリアルで「住宅」を建築するなら、やっぱり無垢材を使いたい。白蟻防除も殺虫剤ではなく、ヒバ油やベンガラにしたい。床下換気もエネルギーを使わず、竹炭で調湿したい。などなど、自分の理想の「住宅」をイメージすると、自然と調和したアート感を持って建築した、在来軸組工法にいきついてしまうのだ。






自力建築に挑戦するためには



建築素人にとって、在来軸組工法は技術的にどうしてもハードルが上がってしまうが、自力建築する人の中でも、在来軸組工法で建築する人もいる。そういった、自分の理想に近い建築をされている、先輩自力建築家をみつけることが、自力建築を成功させる第一歩である。ここで私が、大変参考になった2冊の本を紹介したい。



小笠原昌憲(おがさわら・まさのり)氏は毎年、家づくり講習会を開催されており、私も参加したことがある。養鶏を中心とした自給農をされていて、生活スタイルそのものが私の目指すものに近い。




氏家誠吾(うじいえ・せいご)氏は実際にお会いしたことはないが、DIY好きなのがよく伝わってくる。趣味のDIYがやり過ぎて、本業並みになった方だろうと勝手に私は思っている。氏家氏のHPは、DIYの充実度が高く、結構参考にさせてもらっている。



自力建築を本気で挑戦する前の自己カウンセリング



私は建前棟上げ以外、すべて独りで自力建築することができた。しかし、先輩自力建築家とどうしても意見が合わないことがあり、そのもやもやが、この冊子作成の動機と言ってもよい。DIY好きな方は、やろうと思えば、誰だって「できる」と言うのだ。私が尊敬できる数少ない中の一人である小笠原氏でさえ、誰にだって家づくりはできると言うのだ。

果たしてそうだろうか。誰にだってできると言う人は、「もし、あなたが本気になれば」の、もしもの話の時点で、既に現実から離れているのだ。その人がどんなにポテンシャルがあっても、やってみようと思わない人はできないのである。では、本気で自力建築をやってみるぞ!と、決心した人は皆できるだろうか。決心して、もしできなかったら、誰にだってできると言った方は、できなかった人に何と言うのだろうか。まさか、「あなたの努力が足りない」とでも言うのだろうか。それは失礼であると私は思う。私は、人には向き不向きというものがあり、MAX努力しても無理なこともあると思っている。例えばオリンピック選手には怠惰な方はいない。しかし、金メダルになれる人は一人なのだ。どんなに努力しても金メダルをとれない方や、どんなに努力してもオリンピック選手にもなれなかった方に「あなたの努力が足りない」なんて口が裂けても言えないのと同じである。努力したかしていないかは、本人が一番知っているのだ。その結果に周りの評価は勝手に変わるだろうが、その結果も「あなた」なのである。そして、その結果である「あなた」を「あなた」自身で包容するしかないのである。

よって、私は自力でできたから「皆もできるよー。」などと、軽々しく自力建築を勧めることはできない。それはプロの大工さんにも失礼でもある。DIYは人に勧められてやることではなく、自己分析と自己判断、そして自己責任によってやるものなのである。

自力建築の二つの壁



自力建築を決心した時点で、二つの壁(課題)が出てくる。もちろん、心身ともに健康で、大工道具・電動工具が使える身体機能を持ち、建築資材等購入資金はクリアした前提である。それは、「精神面(精神的課題)」と「技術面(技術的課題)」である。この二つの壁を突破しないと、良い結果は出ないのである。



精神的課題



家づくりは、すべて自分でやろうとすると、手数が多く長期間になってしまう。大工道具・電動工具を買い揃え、そして材木を購入して届いたとき、その投入資金と体積の大きさに、もう逃げられない緊張が走る。そのプレッシャーの大きさが、家具作製などとは比べものにならないのだ。よって施工期間、いかにうまくセルフコントロールするかが、重要になってくる。その時その時、自分の精神状態のバイアスを分析判断し、モチベーションが上がるよう自分自身にアドバイスするのだ。

DIY」と言うと、ホビー的に聞こえてしまうが、フルで言うと、「Do it yourself」である。これを直訳すると、「Please」がないため「自分でやりなさい」となり、実は結構きつい言い方なのだ。たとえ趣味だとしても、その道(建築)は、一生かけても終わりがない深い道なのだ。一時的とはいえ、その道に敬意を表し、緊張感を持って真摯に取り組まなければ、良い結果はでないのである。

しかし、ずっと緊張感という糸をピンピンに張り続けると、参ってしまう。どこかでこころの遊び(余裕)も必須なのである。そのDIY精神の遊びを、うまく訳した人をネットで見つけたので紹介したい。「DIYDekinakutemo Iikara Yattemiyou!(できなくても いいから やってみよう!)」その通りである。真摯に取り組んで、それでできなくてもいいから、自分の感性を自由に楽しませることだ。



技術的課題



素人なのだから当然のことだが、プロだって端からプロではない。はじめは皆、素人からスタートするのだ。どこまで技術的に極めるかは、本人がどこまで建築に対して深く関わるかで変わってくる。

在来軸組工法での技術的課題は、まず刻みである。在来軸組工法で自力建築する人は、この刻みを比較的簡単な刻みにすることで、技術的にクリアしていることが多い。例えば紹介した小笠原氏、氏家氏、両氏ともに継ぎ手は「腰掛鎌継」である。「腰掛鎌継」は「腰掛蟻継」よりも強度があり、丸ノコでかなり綺麗にできる。技術ハードルが丁度良い、やりがいがある刻みである。両氏の他に、DIY雑誌でも在来軸組工法が掲載されていることがあるが、「腰掛蟻継」「蟻ほぞ」「長ほぞ」「重ねほぞ」など簡単な刻みを紹介していることが多い。私は桁の材(せい)が太くなったため「追っ掛け大栓継」にチャレンジしたが、「腰掛鎌継」よりもかなり技術ハードルが高く感じた。

技術的課題をクリアするには、技術ハードルを下げるほかに、自分の知識・技術を上げていく努力も大切である。本を読む。ネットで調べたり、プロの大工さんの動画を見る。いろんな建築物を見学する。その他、自学自習する術はたくさんあるのだ。

しかしそれでも尚、技術的に不安がある場合は、先輩自力建築家かプロに現場に入ってもらうしかない。もちろん、プロに頼めばその分経費はかかってしまうが。私の場合は、有難いことに先輩自力建築家が身近にいたおかげで、自学自習では追っつかないところのアドバイスや、物理的に独りではできない建前棟上げ時にお世話になった。

最後に~


巷の何千万する家は決して、ぼったくりではない。というのが、私の自力建築のまずの感想だ。設備・資材・人件費を考えるとそういう価格になってしまうのだ。ただ、未だに大量生産・大量消費・大量廃棄の社会が続いているため、現代建築物が相変わらず粗末なものになっているのではないかと思う。ほったらかしでも100年以上もっている神社に、30年でガタがきてしまう一般住宅っていったい…と考えてしまう。建築物は人間がつくったものだが、その元のマテリアルは自然からの頂き物には変わりないのである。かつての大和の民がもっていたアニミズム精神を呼び起こさなければ、現代建築物が「バベルの塔」のように崩壊するのではないかと、心配でならない。